こんにちは、kennet64です。
昨年から気になっていた本『100年のジャズを聴く』を先日購入。
この本が発売された2017年は、オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドというニューオリンズ出身の白人バンドが 歴史上初めての「ジャズ・レコード」を録音・発売してから100年目(『100年のジャズを聴く』まえがきより)になる、(諸説あるようだけど)一般的にはジャズが誕生して100年を迎えた記念すべき年。
そんな節目のタイミングに3人のジャズ評論家によって、過去のジャズを再検証しつつ新しいジャズについても取り上げ、「いままでとは違った「ジャズの歴史的な流れの再構築」のとっかかりを提示してみたい」というのが本書の目的であり、企画の発端なのだそう。
表紙をぱっとめくり、まえがきから読み進んでいくとその終わり近い部分に本書の中で名前の挙がったミュージシャンのアルバム120タイトルがディスクガイドとして紹介されているというくだりを発見。
昔だったら、そのディスクガイドを眺めながらこのアルバムは欲しいなとか聴いてみたいなとかリストアップしたりしたけど、今はApple MusicとかSpotifyなどのストリーミングサービスを利用してれば、ちょっと検索したらその作品を見つけられて聴けてしまう、とても便利な時代。
昔はどうの〜なんて野暮なことは考えず、この本を読むならその中で紹介されてるミュージシャンのアルバムを聴きながら読んでいった方がじっくりと楽しめるかなと思い、本編に突入する前の下準備としてiTunesに<100年のジャズを聴く>プレイリストを作成してみることに。
これ、結果的にとてもよかったような気が。なにせ100年分のジャズの入り口となるようなアーカイヴができてしまったようなものですから。
世代の異なる3人のジャズ評論家による鼎談集「100年のジャズを聴く」
『100年のジャズを聴く』は、30、50、70 代と世代の異なるジャズ評論家3人が、15時間に渡ってジャズについて語ったものをまとめた鼎談集。
その3人とは、東京四谷でジャズ喫茶「いーぐる」を経営しつつ長年に渡って執筆活動やムックの監修などもしている後藤雅洋さん(1947年生まれ)、現在進行形の新しいジャズを『Jazz The New Chapter』シリーズなどで紹介している柳樂光隆さん(1979年生まれ)、そしてもう一人が前述のお二人とちょうど間の世代であり『あなたの聴き方を変えるジャズ史』の著者でもある村井康司さん(1958年生まれ)。
本書の優れているところがこの世代を超えた人選ではないだろうか。僕はそう思う。リアルタイムで体験している生粋のジャズ世代、ロックやはたまたジャズから派生したフュージョンをも通過したある意味「何でもあり」の世代、そしてサンプリングという手法によってジャズに新たな価値が見出されたアフター・ヒップホップ的な世代。
ジャズが今なお現在進行形の音楽であるという観点から、この3世代の時代の識者が会し、古今東西のジャズについて語り合う、これが本書の魅力であり、単なる古き良きものを紹介する懐古主義になっていないところが素晴らしい。
ということで、本書の構成を紹介しておこう。
- 序章 いま、ジャズのライヴが面白い
- 第1章 「モンクはリトマス試験紙、こいつはジャズがわかってるかどうかって」
[コラム1] 1970年以降のジャズ・シーンを駆け足でたどる
聴く・聴き直すためのディスクガイド① - 第2章 「やっぱりその時代にとって一番気持ちのいいサウンドっていうのがあるわけです」
[コラム2] ヒップホップ以前と以後のジャズ
聴く・聴き直すためのディスクガイド② - 第3章 「インターネットはジャズの世界も変えた。いいことだと思います」
[コラム3] 他ジャンルの音楽とジャズの関係
聴く・聴き直すためのディスクガイド③
[コラム4] ライヴで知る新しいジャズの魅力 - 終章 ジャズ、来るべきもの
120枚のジャズ・アルバムのプレイリスト
冒頭でも述べたように、まずは<100年のジャズを聴く>プレイリストの作成してみた。
まず、本書と同じタイトルのフォルダを作成し、その中に各章ごとのディスクガイドに紹介されているアルバムを入れるフォルダを作るという至極シンプルなもの。
でもシンプルとは言え、ちょっとした手間で100年に及ぶジャズ史の重要な作品を自分のiTunesライブラリの中に入れることができるのだから、やらない手はないでしょう。正直、何枚かのタイトルはApple Musicになかったりしたのだけど、それは其れでよしとしましょう。それが本当に聴きたい作品なら、後々きっと探すはずだから。そんなところも音楽を聞く楽しみのひとつを言えるのでは。
でもこうしてできた120枚弱におよぶジャズのアーカイヴ。そこからまた新たな世界が広がるわけです。好きな作品が見つかれば、それをきっかけにそのアーティストの作品を掘り返してまた新たな作品に出会ったり、その作品に参加してるミュージシャンの作品をチェックしてみたり。どこまで広げるかは自分次第。でもこれって今の時代のプライスレスな楽しみ方かもしれないですよ。
暫くはジャズ三昧
プレイリストを完成させてから、ディスクガイドの最初に出てくる僕も前から大好きな女性ミュージシャン、Esperanza Spaldingの「エミリーズ・D+エヴォルーション」を聴きながら本編を読み始めてます。鼎談(対談もそうだけど)の良さって、お互いの会話を原稿に起こしているだけに畏まってない感じがしてすっと言葉が入ってくるところ。また各ページ下に登場するアーティストの注釈があるのも、とても親切。
もともとブラックミューッジックは大好きでジャズも聴いてきてるけど、あまり系統立てずつまみ食いのようにちょこちょこと気になる作品を聴いてきた感があるので、こういうガイドとなるような本に出会えたのはかなりありがたい。
暫くはジャズ三昧の日々が続きそう。
ではまた。