数年に一度、観返したくなるお気にりの映画が何本かあります。
アメリカの作家、ポール・オースターの短編を基に自ら脚本まで担当したウェイン・ワン監督、ハーヴェイ・カイテル主演の映画「スモーク」もそんな作品のひとつ。ニューヨークのブルックリンにあるタバコ屋の主人であるハーヴェイ・カイテル扮するオーギー・レンと店に集う隣人・知人たちとのちょっと風変わりだけど、ユーモラスで心温まるストーリーの素敵な作品。
この「スモーク」には、「ブルー・イン・ザ・フェイス」というスピンオフ的な作品もあって、「スモーク」ほどシリアスなストーリー展開はないけど、ジム・ジャームッシュやマイケル・J・フォックス、マドンナなど豪華な出演者が脇を固めた地元ブルックリン愛を感じる、ほっこりするような仕上がりの作品。
「スモーク」と「ブルー・イン・ザ・フェイス」の舞台の中心となっているのは、ニューヨークのブルックリンの街角にあるタバコ屋。隣人たちが他愛もない会話をするためにやって来たりもする地元の社交場のような場所。古い建物の1階の角にあるその佇まいが大好きで、それぞれの映画のストーリーの良さもさることながら、そのお店自体が僕の記憶に焼き付いてしまってるほど。
そんな映画で観たブルックリンの街角にあるタバコ屋を思い出させてくれるような、コーヒースタンドが駒沢公園通りにあります。
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駒沢公園通りのコーヒースタンド「PRETTY THINGS」
そのお店というのは、国道246号線の駒沢交差点から駒沢公園西口を通り過ぎて、しばらく歩いたところにある「PRETTY THINGS(プリティ・シングス)」。駒沢公園通りと駒沢公園に入れる小道の角にあるコーヒースタンド。
このお店を手がけたのは、1990年代後半から東京のカフェブームの火付け役ともいうべき数々の名店を生み出してきた空間プロデューサーの山本宇一さん。
同じ駒沢公園通りにある「BOWERY KITCHEN(バワリー・キッチン)」も山本宇一さんのお店で、僕の大好きなお店のひとつ。
PRETTY THINGS、愛しいものたち
店名の「PRETTY THINGS(プリティ・シングス)」は、自分にとって愛しいものたちという意味を込めて付けられたのだそう。
だからか店内の棚や床には、(おそらく山本宇一さんの私物もあるでだろう)手に取って見たくなるような本や小物が無造作にたくさん置かれてる。それが逆に自然で、あたかもセンスのいい友達の部屋にいるかのような居心地の良さ。
アナログレコードの音を聴きながら、コーヒーを飲むひととき
カウンターには、2台のターンテーブル。そしてお店のさまざまな場所に置かれている中古のアナログレコード。販売もされてるアナログレコードを、店員の女の子がその時の気分で選んでターンテーブルに乗せてかけてくれる。
レコード箱を覗いてみると、そこに入ってるのは70年代のロックや80年代のファンク、ニューウェーブなど懐かしいアルバムばかり。今ではあまり聴くことのなくなった、そんな懐かしい作品だけど、スピーカーから聴こえてくる音が優しい。
そんな懐かしくて、優しい音を聴きながら飲むアイス・カフェオレ。グラスに描かれてる猫のイラストがかわいい。店内を見回すと、アンティーク風の置物やポスターなんかもあったり。
しばらくしてターンテーブルに乗せてかけてくれてたLPレコードの片面が終わったので、お店の女の子が別のレコードをかけてくれたので、もう1面聴いてから帰ろうなんて思えちゃう、ゆったりするひととき。
街角にある居心地いい空間
僕がお店にいた時、常連らしいちょっと年配の方もいる3人組の男性が入ってきて、床に置かれてるビートルズのレコードを手に取って、お店の人と楽しく談笑してました。
その光景が、「スモーク」と「ブルー・イン・ザ・フェイス」のハーヴェイ・カイテル扮するタバコ屋の主人と近所に住む隣人とのやりとりを見ているかのようでとても微笑ましく、傍でそれを何とはなしに聞いていた僕まで気分がさらに和んできました。
駒沢公園通りの街角にあるコーヒースタンド「PRETTY THINGS(プリティ・シングス)」は、そんな居心地のいい空間。
PRETTY THINGS(プリティ シングス)
東京都世田谷区駒沢5-19-10
11:00-23:00